政策シンクタンク・構想日本代表 加藤秀樹氏の寄稿文転載: 【テレビ番組『太田総理』出演から思うこと】

過日、私の大学時代の恩師でもある加藤秀樹・慶應義塾大学教授(政策シンクタンク・構想日本代表)が、テレビ番組「太田総理」に出演しました。 加藤秀樹ゼミOBOGのML等でも事前に私の所にも(出演するという話は)廻ってきて、知ってはいたのですが、私はこの番組を見ていません。その後、加藤先生の感想が述べられたショートエッセイが届きました。非常に面白い視点で記されておりましたので、必要な手続きを致しました上で、下記のように転載しました。
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【テレビ番組『太田総理』出演から思うこと】      構想日本代表  加藤 秀樹
初めてテレビのバラエティ番組に出演した。面白かった。まず感心したのは、日本の政治家がとても真面目だということだ。
私が出たのは、20人くらいの出演者が一つのテーマについて、賛否に分かれて国会で議論するという想定の番組だ。その日のテーマは「国会議員を100人にする」で、出演者のうち8人が現職の国会議員だった。
私は賛成の立場で出演したが、国会議員は8人中7人が反対席に座った。反対席の議員がいきなり「100人は非現実的だ」ときた。他の国会議員も口々に同様のことを言う。本気で「100人」について議論するものだから、私はすっかり面食らってしまった。 どうやら、おちゃらけモードで来たのは私一人だったようだ。この議論は延々と続いた。
「国会議員の数が少ないと官僚を抑えられない」「だから公務員も減らさないといけない」「それには徹底した行政のスリム化、地方分権が必要だ」「やっぱり道州制だ」 議員の定数とは別の話だし、それこそ非現実的な話も多かったのだが、それでも政治家たちは大変真剣に議論をしていた。私はモード切り替えができないままに、落ちこぼれ生徒のように向こうの方にあったモニターをぼーっと見ていたら、あとで番組を見た教え子から「先生、何をよそ見していたのですか。あれでは番組の最初に紹介された国会で居眠りしている議員と同じじゃないですか!」とメールが来た。
日本の政治家は、このように真面目なのだが、問題設定能力は高くなかった。「政治家と官僚」「地方分権」・・・と話題が移るごとにみんなでそちらにわーっと行く。池に餌を投げると鯉が集まってきてバシャバシャと争って餌を食べる。向こうへ投げたらまたみんなで行ってバシャバシャやっている。こんな感じがした。
一方、芸人の発言は面白かった。一人が何か言う。もう一人がそれに絡む。テンポもいいしそこで話題が完結して対話が成立しているのだ。売れっ子なのかそうでないのか、私はわからないが、さすがプロだと思った。これに比べると、政治家のほうはおしゃべりが続くばかりで対話が成立していない。
太田総理(番組の中での総理役)のテーブルのひっくり返し方も面白かった。「こっちでバシャバシャ」があまり長くなると、ひっくり返して次の話題を促す。本物の総理もこれができるとスカッとするだろうなと思ったり、小泉さんはやってたな、と思いながら見ていた。
最後に、番組では出る幕がなかったが、もし議員を100人にするとどうなるか、私の答えは次のようなところだ。
現在の比率でいくと、議員100人なら自民党が50数人だそうだ。そうならば、大臣、副大臣、政務官だけで終わってしまう。選挙に勝ったら全員(広い意味での)大臣職に就けるわけだ。これはこれでスッキリして良いのではないか。負けたら野党として国会で大臣たちとしっかり議論する。採決なんか所詮、数が多い方が勝つのだから形式的なものだとも言える。100人になったら、閣僚と野党議員が、議論はするが採決はしない国会になるのもいい。この方が今の日本の政治よりよっぽど本来の議院内閣制に忠実だとも言える。
ついでに一つ提案をしたい。番組では二院制か一院制かで議論していた。イギリスには日本の衆議院にあたる下院と、かつての貴族議院にあたる上院(House of Lord)がある。こちらは世襲貴族及び国家に大きい貢献のあった一代限りの貴族(たしかサッチャー元首相もこれに列せられていたと思う)からなる。日本の衆議院は世襲率が3割近いといわれている。それなら、いっそのこと衆議院を貴族院に改名したらいいと思う。
私は、おちゃらけモードからまだ出られずにいる。
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