昨日の神奈川県議会本会議終了後、臨時に震災対策調査特別委員会が開かれ、来月、女川町(宮城県)、宮古市(岩手県)に震災瓦礫の処理状況等についての現地調査を行うことが正式に決まりました。私も特別委員会委員の一人として、再び現地へと行って参ります。
/本日も「焼却や埋め立てまで処理が進んだのは、21日現在で100万トン余りと、がれき全体の5%にとどまることが、環境省の調べでわかった」と報道されている通り、震災瓦礫の処理は遅々として進んでおらず、非常に大きな問題であります。
/先日、私の大学弁論部先輩でもある蒲田宏・仙台商工会議所会頭(七十七銀行代表取締役会長・東北経済連合会副会長・日本商工会議所副会頭)とお話をさせて頂いた際も震災瓦礫の受け入れについて、黒岩祐治・神奈川県知事が前向きに取組んでいることについて、感謝の言葉がありました。
/逆に名切文梨・厚木市議会議員をはじめとした受け入れ反対を表明する方からは「震災瓦礫は絶対に受け入れるべきではない。被災地支援の形は他にもあるはず。」との要望も頂き、先日の民主党かながわクラブ県議団・団会議でもこの旨、報告致しました。
/この様に震災瓦礫の受入れについては、賛否両論あります。そうした中、私が最も遺憾に思うのが「黒岩知事の軽い発言の数々」です。
/過日の神奈川新聞においても黒岩知事は「(2月17日)『前に出した提案は撤回せざるを得ない。同じことを繰り返しお願いすることはない』と述べる一方、『何らかの形で受け入れたいという思いは変わっていない。ほかの知恵を出さなければいけない』とも述べ、引き続き受け入れを模索する考えを示した」と報道されました。
/黒岩知事は、今議会の提案説明や本会議での答弁で「これまでは、ややもするとプロセスを大事にするあまり、結果を出すまでに時間がかかることがあった。しかし、私は、政策決定・実行にあたっては、スピード感を重視したい。結果にこだわり、速やかに結果を出す。(文末に引用掲載【参考資料1】)」と述べています。
/しかしながら、震災瓦礫の処理にあたっては、「プロセスを重視せず軽視し、結果も出せない」状況にあります。結果を出すどころか、かえって状況を悪化させています。状況を悪化させているというのは、結果として、県内3つの政令市の動きの足を引っ張っているということです。横須賀市に対しても巨大でタフな、しかも余計な仕事を新たに作ってしまいました。
/過日行われた「第46回神奈川県環境審議会」においても発言をさせて頂きましたが、現在、自治体はそれぞれ、血のにじむ努力を重ねて、ごみの広域処理を行っています。厚木市では、愛川町、清川村と共に「厚木愛甲環境施設組合(一部事務組合)」をつくり、「中間処理施設(ゴミ焼却場)は厚木市」「最終処分場(ゴミ埋立地)は清川村(その後、愛川町)」に作り、自域内処理の枠組みを作りました。最終処分場を作った際も清川村関係者の方々が、ギリギリの努力をして頂き、どうにか実現に到りました。
(私自身も厚木市議会議員時代、3期にわたって、厚木愛甲環境施設組合議会(一部事務組合議会)議員として働き、組合議会一般質問、厚木市議会等においても熱い議論を重ねて参りました。)
/神奈川県は、ごみの中間処理施設(焼却施設)を持っていません。ごみ処理・瓦礫処理については、唯一、最終処分場(横須賀市芦名地区産業廃棄物最終処分場)を持つのみです。
/つまり、「神奈川県で震災瓦礫を受け入れる=横須賀市芦名地区に埋め立てる」ということになります。瓦礫をそのまま持ち込み、生のまま埋め立てるのか、(先に受け入れを表明している)横浜・川崎・相模原の政令三市にて中間処理(焼却)をしたものを埋め立てるかのどちらかとなります。
/しかしながら、神奈川県が受け入れることは簡単ではありません。横須賀市芦名の最終処分場に震災瓦礫を受け入れるには、「県内の産業廃棄物に限定する」とした協定書があるために地元住民や横須賀市との協議をきちんと持ったうえで、合意を取り付けなければならないのです。これは、絶対条件です。
/私が遺憾に思うのは、こうした協定書があるにも拘らず、これを無視し、知事が奔放な発言を繰り返してきたことです。また、これを許してきた、二人の副知事、担当する理事者にも責任があります。現場を全く知らない知事ですから、責任はむしろ、副知事以下の理事者にあると言えるかもしれません。
/黒岩知事はブログの中で「神奈川県が一からスキームを作るのではなく、東京都とうまく連携してやれば、スムーズにいくだろうと感じました。」と述べていますが、「知事それは違います。神奈川ではスムーズにいきません。」と指摘してくれる職員が誰も居なかったことも驚きです。
/これまでの経緯(参考資料3)を簡単に後述しましたが、昨年5月17日の知事の発言をもって、横須賀に入り、協定書改定に向けた動きをしていれば、(受け入れの可否についての)結果はどうであれ、これほどまでに状況が悪化することはなかったはずです。「東京都で受け入れを行ったので、神奈川でも」と簡単にいかない事は、関係者なら誰でもわかることです。
/以上、非常に強い口調で述べましたが、ゴミ最終処分施設(埋立地)や中間処理施設(焼却場)の建設にあたっては、現場は本当に苦労をされます。私の地元の厚木市や清川村、愛川町も苦労に苦労を重ねてこの問題にあたっています。前々回の厚木市長選挙も厚木の中間処理施設建設問題(棚沢地区=のちに白紙撤回)が遠因となって、市長が交代しましたし、昨年11月もゴミ処理問題が原因で、小金井市長(東京都)が責任を取り辞職をされました。ゴミ処理の対応をめぐっては、自治体の担当職員が「(責任を取って)自ら命を絶つ」といった話を過去に何度か聞いたことがあります。それほどまでにクリティカルな問題であるわけです。
/「いのち」を大切にするという黒岩知事が、震災瓦礫受け入れに関して、軽い発言を繰り返される原因には、地元・現場に対する理解が足りないのではないかと私は考えています。ジャーナリストとしては通用しても、知事としては通用しません。
/また、ここでは詳細について触れませんが、今回の横須賀市芦名の地域周辺には、新たなゴミ中間処理施設の建設も予定されています。今回の知事の発言により、この計画にも影響があるとすれば、本当に問題です。ゴミ問題に係わってきた自治体議員としても遺憾に思います。重ねて言いますが、おそらく、横須賀市芦名の施設にかかわってこられた関係者の皆さん(含県職員)は、血の出るようなご努力をされてこられたものと思います。これと同じくらいの努力をされてはじめて、震災瓦礫の受け入れも議題に上がるのです。
/本当に被災地の方々のことを思って受け入れをしたいのだとすれば、少なくとも1年くらいはかけて、芦名に関係した県職員と共に現場に足を運び信頼関係を構築するべきだったのではないでしょうか。今の知事ならば「1年もかけられない。スピード重視だ。」との言葉もありそうですが、最初の受け入れ表明からは既に9か月が経っています。「現場にこそ真実あり」とは知事の言葉ですが、今回の震災瓦礫の一連の知事の行動と言動をみれば、私は知事の本気度を疑わしくみてしまいます。
/実は、今回の問題に関しては、一度しっかりと取り上げなければならないと考えていました。神奈川県環境審議会では、震災瓦礫に関しては、質疑出来る範囲の制約があるということもあり、満足な質疑が出来ず、意見表明に留まりました。県議会一般質問の出番は、半年以上待たなければなりませんし、現在の常任委員会は所管外です。唯一、質問のできそうな「震災対策調査特別委員会」においても、震災瓦礫受け入れの問題に対する質問は制約がありそうですが、ひるむことなく今後もしっかりと議論をして参ります。
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【参考資料1】:
黒岩知事は、2012年2月14日の知事提案説明(平成24年第1回定例会初日)にて、(最後に)以下のように述べています。
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最後になりましたが、今後の県の取組みの基本的姿勢についてです。今後、「いのち輝くマグネット神奈川」の実現に向けて、「かながわグランドデザイン」に沿った取組みを進めてまいります。これまでは、ややもするとプロセスを大事にするあまり、結果を出すまでに時間がかかることもありました。しかし、私は、政策決定・実行にあたっては、スピード感を重視したいと思っています。結果にこだわっていく、結果に向かって突き進んでいく、速やかに結果を出していく、こうした意識を強く持って取り組んでいきたいと考えております。/そうしたときに、キーワードとなるのは「クロス・ファンクション」、いわば部局横断的な取組みです。縦割りの枠を超えて、それぞれの局の機能を有機的に組み合わせ、知恵を出し合って県庁の力を結集し、「いのち輝くマグネット神奈川」の実現に向けて、速やかに、かつ、きちんと結果を出していきたいと考えています。(引用終わり)
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【参考資料2】: 「芦名最終処分場に存在する協定書(要約)」
芦名の最終処分場に関して言えばには、この最終処分場が作られるときに、県と地元芦名町内会との間で「協定書」が結ばれています。
1、最終処分場への持込みは、県内の産業廃棄物に限定すること。
2、持ち込む廃棄物も8種類に限定していること。
3、ダイオキシンや飛散アスベストは搬入しないこと。
4、協定書の内容をこえる提案をするには、協議と住民との合意が必要。
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【参考資料3】: 「これまでの経緯」
/黒岩知事は、昨年、2011年5月17日、記者会見で東日本大震災で発生した瓦れきなどの災害廃棄物について横須賀市芦名の処分場で受け入れる意向を表明しました。その後、昨年12月20日の県議会最終日の本会議で、被災地からの震災瓦礫を神奈川県として受け入れることを再表明しました。
/2012年2月17日「前に出した提案は撤回せざるを得ない。同じことを繰り返しお願いすることはない』と述べる一方、『何らかの形で受け入れたいという思いは変わっていない。ほかの知恵を出さなければいけない』とも述べ、引き続き受け入れを模索する考えを示した」(神奈川新聞)
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